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会社設立後に役員報酬を決めていないとどうなるのでしょうか。会社設立後に最初にお悩みになる重要事項の一つが役員報酬のが額なので、中々決められないという方もいるかもしれません。
無報酬の扱い、設立・期首から3か月以内という期限、遡及支給の税務リスク、社会保険への影響、期限を過ぎた場合の対処法を税理士が解説します。
会社を設立したものの、「役員報酬をまだ決めていない」「売上が安定してから金額を決めたい」という方は少なくありません。
結論からいえば、役員報酬を支給しないままでも、直ちに罰金が科されたり、会社を経営できなくなったりするわけではありません。ただし、金額を決めずに時間がたつと、その事業年度中に支給した役員報酬を会社の経費にできなくなる可能性があります。
特に注意したいのが、設立日または事業年度開始日から3か月を過ぎた後の決定と、過去の分をまとめて支給する「遡及支給」です。役員報酬は、従業員の給与のように必要なときに自由に増減できるものではありません。
株式会社の取締役の報酬は、定款に金額の定めがなければ、原則として株主総会の決議で決めます。これは会社法第361条に定められています。
そのため、役員報酬を決議していない状態は、単に「金額欄が空白」というだけではなく、会社から取締役へ報酬を支給するための正式な根拠が整っていない状態です。結果として支給額が0円であれば、法人の経費も役員個人の給与収入も発生しません。
役員報酬を0円にすること自体は可能です。ただし、「決めるのを忘れていた」のか「当期は無報酬と決めた」のかが分かるように、1人会社であっても、株主総会議事録などに無報酬である旨を残しておく方が無難だとは思います。ただ、これが残っていないからという理由で税務調査で余計な課税をされるというものでもありません。
法人税法上、毎月の役員報酬を会社の損金に算入するには、原則として「定期同額給与」の要件を満たす必要があります。簡単にいえば、毎月決められた時期に、同じ金額を継続して支給する役員給与です。
通常の改定が認められるのは、原則として事業年度開始日の属する会計期間の開始日から3か月以内です。そのため、新設法人では設立後3か月以内、既存法人では期首から3か月以内に株主総会等で金額を決め、毎月一定額の支給を始めるのが基本となります。
例えば、4月1日設立の会社が6月中に「代表取締役の報酬を月額30万円、毎月25日支給」と決議し、その内容どおりに支給する形です。実務上は、次の事項を議事録に明記しておくとよいでしょう。
なお、「3か月以内に決議さえすれば、設立月まで遡って支払える」という意味ではありません。支給していなかった過去分を後からまとめて振り込むと、その一括支給分は定期同額給与に該当せず、損金に算入できない可能性が高くなります。議事録の日付だけを過去の日付にして帳尻を合わせることも、絶対に行ってはいけません。
設立または期首から3か月を過ぎて役員報酬を決めた場合、会社から支払うこと自体が直ちに禁止されるわけではありません。しかし、法人税の計算上、支給額の全部または一部が損金不算入となるおそれがあります。
損金不算入になると、会社では役員報酬を経費にできない一方、受け取った役員側では原則として給与所得として課税されます。つまり、会社の法人税等が減らないのに、個人には所得税・住民税がかかるという不利な状態になりかねません。
年度途中の変更が認められる例外として、役員の職制上の地位や職務内容が大きく変わった場合などの「臨時改定事由」や、経営状況が著しく悪化した場合の「業績悪化改定事由」などがあります。
しかし、「金額を決め忘れた」「利益が出そうなので報酬を取りたい」「資金繰りに余裕が出た」といった事情は、通常これらの例外には該当しません。
すでに3か月を過ぎている場合は、慌てて過去分をまとめて支給しないことが大切です。一般的には、次のような対応を検討します。
第一の方法は、当期は役員報酬0円のままとし、次の事業年度の開始後3か月以内に改めて金額を決める方法です。税務上は最も分かりやすい対応ですが、役員個人の生活費をどう確保するかという問題が残ります。
第二の方法は、当期中から支給を開始したうえで、損金不算入となる可能性を踏まえて申告する方法です。会社の利益、個人の所得税・住民税、社会保険料まで試算し、それでも支給する必要がある場合に検討します。ただし、個別事情によって税務上の判定が変わるため、支給前に税理士へ確認した方が安全です。
会社のお金を生活費として自由に引き出し、後で役員報酬に振り替える処理も避けましょう。会社と社長個人は別人格です。根拠のない引き出しは役員貸付金となり、適正な利息を収受しなければ利息相当額が役員給与として扱われたり、金融機関からの評価が悪くなったりすることがあります。
ちなみに、これは勘違いしてる方が多いと感じているのですが、役員報酬を決めていたけど、資金繰りの影響名など諸事情があって実際に支払をしていなかったというケースでは、決定自体はしていたので問題ない可能性が高いことになります。つまり、後からその分を支給すれば大丈夫です。ただし、あまりに時間が過ぎると、税務署から「実際は後から決定したのに、先に決定したことにしてるんじゃないか?」と疑われる可能性もあります。
役員報酬を決めない場合は、社会保険への影響も確認が必要です。日本年金機構は、法人事業所で被保険者となる人がいない場合、例えば無報酬の役員しかいない場合には、適用事業所の要件を満たさないと案内しています。
一方、役員報酬を受け取る常勤役員や加入対象となる従業員がいる法人は、原則として健康保険・厚生年金保険への加入手続きが必要です。
また、本業の勤務先ですでに社会保険へ加入している人が、副業法人からも役員報酬を受け取る場合には、「二以上事業所勤務届」の提出が必要になることがあります。
したがって、「報酬を決めなければ社会保険に入らなくてよい」と安易に考えるのは危険です。報酬の有無だけでなく、勤務実態や従業員の有無、本業の勤務先との関係を含めて判断する必要があります。
余談ではありますが、副業先で社会保険に加入すると、本業先に副業の会社から役員報酬を得ていることは知られてしまいます。税理士としての経験上、この点を知られたくないと考えている方は多く、あえて0円としているお客様もいらっしゃいますね。
役員報酬は、高くすれば会社の利益と法人税等を減らせる一方、役員個人の所得税・住民税や社会保険料は増えます。低くしすぎれば個人の生活費が不足し、会社からの借入れが増える原因にもなります。
また、役員報酬の金額は、銀行融資や住宅ローンの審査、将来受け取る厚生年金の金額などに影響することもあります。
決定する際は、会社の予想利益だけでなく、役員個人の必要資金、家族構成、他社からの給与、社会保険料まで含めて試算することが重要です。
役員報酬を決めていなくても、直ちに会社経営ができなくなるわけではありません。しかし、決定を先送りすると、その事業年度中に支払う報酬を損金にできない可能性があります。
設立直後または期首直後であれば、原則として3か月以内に株主総会等で月額、支給開始月、支給日を決め、議事録を作成しましょう。
すでに期限を過ぎている場合は、遡及支給や日付をさかのぼった議事録作成をせず、当期は無報酬とするか、損金不算入を前提に支給するかを個別に検討します。
役員報酬は、一度決めると期の途中で自由に変更しにくい項目です。会社と個人の税負担、社会保険料、資金繰りを総合的に比較し、できるだけ支給開始前に税理士へ相談することをおすすめします。
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